FROM 川嶋朗
「川嶋先生のクリニックは、
まるで人生相談の駆け込み寺のようですね」
取材にいらした記者の方に、
そう言われたことがあります。
実際、私の診察では、患者さんの口から
家族に関するグチや人間関係の悩み、
生い立ちにまつわるつらい思い出・・・
など、およそ医療とは関係なさそうな
話が次々と飛び出すことがよくあります。
「先生、聞いてくださいよ。
うちの母ったら、90にも近い年なのに
真っ赤な口紅をつけて出歩くんですよ。
もう、恥ずかしいったらありゃしません」
「へぇ、そうなんですか。
若々しくていいじゃないですか」
「そんなことありませんよ!
あんな母と同居するなんて、
もう私はねぇ・・・」
とまぁ、こんな具合。
ほかにも、
「実は、子どもが不登校で困っています」
「自分勝手で横暴な夫から
逃げ出したいんです」
など、患者さんのお話はさまざまです。
これでは、人生相談と間違えられても
仕方ないかもしれません。
しかし、これでも私は
れっきとした西洋医学の医者です。
その私がなぜ、世間話のような
患者さんの言葉に聞き入るのか。
それは、私とのおしゃべりを通じて、
患者さん自身に、自分が病気になった
原因に気づいていただきたいからです。
「えっ、病気の原因は、
病院で教えてくれるんじゃないんですか?」
多分、みなさんはそう思われるでしょう。
しかし、病院でわかるのは、
その病気を引き起こした
直接的な原因ぐらいです。
たとえば膠原病なら、自分の体を
攻撃する自己抗体というものが
できてしまうのですが、
なぜ自己抗体ができてしまうのか。
その根本原因は、いくら検査しても
わからないのです。
私は、病気は外から
突然やってくるのではなく、
自分のなかで作り出して
いるものだと考えています。
病気の根本原因は、
その人自身のなかにあるのです。
根本原因がわからなければ、
病気はほんとうには治りません。
「そういえば、仕事のストレスから
暴飲暴食を繰り返していました」
「実の娘をどうしても好きになれず、
そのことでずっと悩んでいました」
そんなことが、病気のひきがねに
なる場合もあるでしょう。
生い立ち、性格やものの考え方、
食生活をはじめとするライフスタイル、
家族との関係、学校や職場の環境や人間関係・・・
など、人生のどこかに
心や体をいためるきっかけが、
何か必ずあったはずです。
自分のなかに原因がある以上、
それに気づけるのは自分しかいません。
だから、私は患者さんから
お話を聞きたいのです。
なかなか話してくれない人には、
ズバリこう聞きます。
「どうしてがんになったんですか?」
みなさん、一瞬絶句します。なかには
「それを教えてくれるのが医者だろ!」
と怒り出す人もいます。
でも、冷たいようですが、私は
患者さんじゃないからわからないのです。
病気になるのも、自分。
病気の原因に気づくのも、自分。
そして病気を治すのも、結局は自分です。
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◎編集後記
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頭だけで悩んだり考えたりして
いることって、もしかすると無意識に
心や体にも負担をかけたり、
傷をつけたりしているんでしょうね。
できるだけ早く、その傷に
お薬塗って癒してあげることができれば
問題ない(というより成長に通じる)
んだろうけど、我慢していると
病気を生み出すきっかけになるのかも
しれませんね。
ー 剱 悠子
PS
自分のなかで生まれた病気や症状の
原因に気づいてあげる方法