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FROM 帯津良一

北京空港には北京市立がんセンターの
放射線科医師の張益英先生と
謝玉泉先生が出迎えてくれた。

その足で北京での宿舎となる北京飯店に。

長安街の道路は自転車であふれ、
自動車のクラクションが喧(かまびす)しい。

明けて第2日目は北京市郊外にある
北京市肺がん研究所付属病院へ。

ここは勇将辛育齢教授の下、
鍼麻酔(はりますい)でつとに有名。

少し前に訪中したアメリカの
ニクソン大統領に随行していた

ハーヴァード大学のアイゼンベルク教授が
鍼麻酔について世界に発信したために

その知識については私たちも共有していた。

まずは手術室へ。
ここでは左開胸の手術がたけなわ。

開創器の下に敷かれた
布片(ふへん)の汚れ具合から、
手術開始から約1時間が経過しているのがわかる。

3人の医師が手術の手を休め、
私たちに歓迎の会釈。

あれ!少しちがうな。

このような場合、二人が会釈しても
一人はかならず術野(じゅつや)を見ているように
私たちは教育されてきた。

中国の外科医はおおらかなのだろう。

会釈を返して患者さんを見ると
これがまた会釈しているではないか。

これには度肝を抜かれた。

ただ気管内にはガス麻酔で用いるような
チューブが挿入されている。

術中ときどき肺をインフレイト(膨らませる)
する必要があるからだ。

術後の肺合併症を防ぐためである。

チューブが入っていても
患者さんは苦しそうなことはない。

左手の合谷(ごうこく)
(*大腸経・だいちょうけい)と

左前腕の山陽絡(さんようらく)
(*三焦経・さんしょうけい)に
1本ずつ鍼が刺してあるだけだ。

これで麻酔がかかって開胸手術が
粛粛とおこなわれているのだからおどろきだ。

ただ、1時間半ほどの手術の間に
二度麻酔が切れたのである。

患者さんが痛そうにして顔をしかめたのだ。

麻酔医が2本の鍼の頭をとんとんと
叩いただけですぐに麻酔が戻ったようだ。

もう一度は叩いただけでは戻らない。

すると小さな通電器のようなものを持ち出して、
2本の鍼に通電すると速やかに戻った。

手術が済むと看護師さんの一人が
胸帯を巻いてから患者さんの上半身を起こして
パジャマを着せる。

次いで運び込まれたス
トレッチャー(車輪付きのベッド)に
患者さんは自分で移り、

私たちに向かって、やぁーと手を挙げて
手術室を出ていった。

いやぁ、見事なものだ。

あれは誰にでも効くものなのですか?
と教授に問うてみた。

効く人と効きがない人があると言う。

その差はいずこに?

いやぁ素直な人は効くんですよ。

しかし、初めて会う人が
素直な人か素直ではない人か
見分けることはできないでしょう?

そりゃあ、そうですよ!

だから、全員素直でない人と見立てて
全員に気功を3週間やってもらうんですよ。

すると皆が皆、素直になって
麻酔が効くようになるんですときた。

*大腸経
身体のなかの気の通り道である経路の一つ。
人差し指の先から手の甲、腕を上り、
肩、頚、鎖骨を経由し、肺と大腸につながる。

*三焦経
身体のなかの気の通り道である経路の一つ。
薬指から手の甲、腕を上り、肩、頚、側頭部を経て
顔の外眼角に走る。

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◎編集後記
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子供が芋掘り遠足に行ってきました。

お芋をたくさん持って帰ってきてくれて
嬉しかったのですが、
正直細いお芋が多くて
調理がたいへんでした…汗

秋の香りを感じました。

―三浦とも子

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