FROM 帯津良一
帰国するや否や、
買い求めてきた気功の本を
片端(かたはし)から読んでいった。
中国語の素養はないが
漢字だから意味は通じる。
簡略文字もすぐになれた。
イラストが豊富なのもいい。
そしてわかったことは
調身(ちょうしん)、調息(ちょうそく)、
調心(ちょうしん)の三要素が揃っていれば
全て気功であるということであった。
だったら日本にだってたくさんあるではないか。
調和道丹田呼吸法、
岡田式静坐法、
肥田式強健術、
自彊(じきょう)術などなどである。
とりあえずは和製の気功でいくことにして、
八段金(はちだんきん)を始めたのである。
術後2週間ほどして、
重湯(おもゆ)からお粥へと進んで、
院内を歩き始めるといった
人心地(ひとここち)のついた患者さんに声をかけ、
空いている部屋を見つけて
気功の手ほどきをする。
ただこの頃は病名告知が行き渡ってはいない。
あなたは食道がんですと告知していないので、
再発防止に気功をということが言えないのである。
なぜ、このようなことをするのか
という説明がどうしても歯切れが悪くなる。
説得力がない。
患者さんは浮かぬ顔をして手足を動かしている。
わずか10分か15分くらいのものだが、
終わって明日もやりますからね、
午後の3時にここに来てくださいと言っても
ほとんどの患者さんが現れない。
そこで病室に迎えに行くと
ベッドは蛻(もぬけ)の殻(から)。
といった有様で一向に埒(らち)が明かない。
やはりだめなのか…。
中国医学はあきらめて外科医に徹しよう
と一度は思ってみたものの、
一旦思いついたことは
なかなか拭い去ることができない。
時間はかかるかもしれないが、
いずれ東から風が吹くだろう
(本当は中国からの風は西風だが
東洋医学ということで、東風に。)
いまの自分にできることはなんだろう。
それならば、自分がお山の大将になって
大いに腕をふるってみようと、
中西医結合によるがん治療を
旗印にかかげた病院を開設することにしたのである。
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◎編集後記
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今日は年末年始のように
寒いところが多いようです。
年末年始って
このくらいの寒さなのか…と
寒さの予行演習をしている気分になりました。
あたたかくしてお過ごしください。
ー 三浦ともこ