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FROM 帯津良一

遼寧(りょうねい)省の内陸に育った李岩先生が、
突然海を見たいと言う。

私としてもとくに当てがないので、
新幹線に乗って小田原の海岸に行ってみた。

「これが海です……」
「……これが海か……」

左右を見回して一件落着である。

後は砂浜に坐り込んで、
その辺に落ちていた竹のぼうで

砂の上に字を書きながらの
漢方薬談義である。

中国で開催される対がんの漢方薬の学会にも
できるだけ出席するようにした。

いまのように電話が普及していない
当時のことである。

新宿にあるKDDに李岩先生からの
電報がとどくと病院に連絡があり、

それを受け取ると訪中である。

いつも李岩先生が付き切りで世話を焼いてくれる。

国際学会ではないから通訳は存在しない。
しかしほとんどの演者がスライドを使う。

中国語にしても英語にしても
字になればこっちのものだ。

十分に理解できる。

参加者のなかに日本語のできる人もいれば、
李岩先生があれこれ紹介してくれるので、

交流の輪はその都度拡がっていく。

この人たちが来日する。
あるいは係累(けいるい)の人が来日すると
訪ねてくる。

という具合にしてまた輪が拡がっていく。

また北京市の広安門(こうあんもん)医院が
主催しての日中韓の学術集会が毎年開かれたが、

ここには津村順天堂さんがツアーを組んで
私たちを丸抱えで送り込んでくれた。

ここでは日本語の達者な朴炳奎医師が
案内を担当していたので、

じつに実りの多い会であった。

当初はかぜに葛根湯、
更年期障害に加味逍遙散(かみしょうようさん)
というのはわかるが、

がんは漢方薬では無理でしょう!?というのが
患者さんや医療者の認識であった。

しかし、こうして中国との行き来が
足繁くなるにつれ、

漢方薬への期待も着実に高まっていった。

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◎編集後記
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年末が近付いてきました。

今まで見ないふりしていた
たまった汚れ…避けられなくなってきました。

そろそろ覚悟を決めて
換気扇と格闘します!

―三浦とも子

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